雨の代々木公園に、1,000人が立っていた——CYNHN初の野外フリーライブ

2026年5月13日(火)、代々木公園野外ステージ。午前中は晴れていた。
開場予定は17:30。だが夕方から空が暗くなり、雷が鳴った。本降りの雨。開場は約1時間押して18:25、開演は18:38になった。スタッフはもぎりの動線を急遽変更し、リストバンド手渡し方式に切り替えて入場を10分に圧縮した。雨の中で待っていた人たちが、一気にエリアへ流れ込む。
CYNHN初の野外ワンマンライブ。入場無料のフリーライブという形式だったが、前方エリアには有料のプレミアムチケット(12,000円)と優先エリア(5,000円)が用意されていた。平日の火曜、雨天。それでも約1,000人が集まった。代々木公園野外ステージの椅子なし上限が約1,000人。つまり、満員だ。

「楽の上塗り」から「春を攫った」まで
1曲目は「楽の上塗り」。雨の中、新衣装で現れた4人。野外ステージに広がるCYNHNの音は、ライブハウスの反響とは違う響き方をする。音が空に抜けていく分、声の芯がよく聞こえる。
本来のセットリストは18曲だった。雷雨の影響で5曲がカットされ、この日は13曲に。「ラルゴ」「AOAWASE」と序盤から代表曲を並べ、「水生」「はりぼて」と中盤に入ったあたりで「氷菓」が来た。青柳透が落ちサビを地声のハイトーンで押し切る場面は、野外の空間に声がまっすぐ伸びて、ライブハウスとは違う届き方をしていたように見えた。
日が落ちた。
「インディゴに沈む」「くもりぎみ」から「息のしかた」「2時のパレード」へ。暗くなった野外ステージで、雨と夜と静かな楽曲が重なる時間が続いた。セットリストの短縮が、結果的に後半の密度を上げていた。
転換点は12曲目だった。
「春を攫った」。CYNHNが「季節」を正面から歌うのは、これが初めてだった。渡辺翔が書き下ろし、高橋諒が編曲した新曲。6月3日の配信リリースに先駆けて、雨の代々木公園で最初に鳴った。

ステージ上の2つの言葉
新曲の余韻が残るステージ上で、11月のZepp DiverCity(TOKYO)ワンマンがサプライズ発表された。
青柳透は「その大きな舞台を満員で迎えたい」と話した。
綾瀬志希の言葉は、もう少し静かだった。「あなたの居場所は、これからも私たちの歌が守ります」。
フリーライブという形式を選んだことの意味が、この2つの言葉に表れているように聞こえた。無料で来られる場所を作り、その場所から次の大きな箱を見せる。1,000人に「ここにいていい」と伝えた上で、2,000人を超える舞台を指し示した。
ラスト曲「いいおくり」。MCからの歌い出しで、この日いちばん大きな声が客席から返ってきた。

公園を出た後の20万インプレッション
雨が上がる前に、公園の外では別のことが起きていた。
この日のフリーライブは、X上で合計20万インプレッションを超えた。Zepp DiverCity発表の投稿が49,000。音楽ナタリーのライブレポRTが47,000。作詞作曲の渡辺翔による引用RTが35,000。舞台裏動画2本が31,000と18,000。テイチクエンタテインメントの公式御礼が19,000。同じ1日の出来事が、それぞれ違う人の手でタイムラインに載っていった。
ニコニコ生放送での独占生中継も行われており、アーカイブは6月12日まで視聴できる。現地にいなかった人にも、この日は届いている。
客席には、さよならステイチューンやChumTotoなど同じ事務所のメンバーの姿もあった。渡辺翔フェスをきっかけにCYNHNを知った人、友人に連れられて初めてワンマンに来た人。フリーライブという形式が、普段のライブハウスとは違う客層を呼んでいた。
カットされた5曲——「わるいこと」「ごく平凡な青は」「バニラ」「夜間飛行」「キリグニア」は、後日「オリジナルバージョンプレイリスト」として公開された。18曲のセットリストが本来どういう設計だったのか。その答えは、まだどこかの舞台に残されている。
雨の代々木公園に、1,000人が立っていた。屋根のない場所で、傘もささずに。
